前回「交通誘導警備員とは」について記事を書きましたが、今回は警備業の各種資格とその役割について書いていこうと思います。この記事を通して、警備員になりたい方や現職の方には資格取得を目指す理由などを、警備業務を依頼している企業担当者の方に対しては、少しでも警備業の資格とその役割について理解していただければ幸いです。

警備業には、国家資格として「警備業務検定」と「警備員指導教育責任者」2つの代表的な資格があります。
では、まずは「警備業務検定」について解説していきたいと思います。

 

「警備業務検定」とは


警備業務検定制度の概要では、警備業務検定は、警備業法の「警備員等の検定に関する規則」によって設けられたものであり、警備業務に関し一定以上の知識および技能を有することを公的に認定する。という主旨の資格になります。

この検定は警備員として働く場合は1番身近で必要性が高く、自身のスキルアップなどを目指すには避けては通れない資格になります。それが【警備業務検定】です。

警備業務検定には「空港保安警備業務・施設警備業務・雑踏警備業務・交通誘導警備業務・核燃料物質等危険物運搬警備業務・貴重品運搬警備業務」の国家資格があり、全部で6業務種があります。この6種類の検定には1級と2級がそれぞれにあり、2級の受験には警備業法で定められた警備員としての欠格事由等に該当していなければ、特に制限なく、誰でも受験することが可能です。1級の受験については2級の検定合格後1年以上当該警備業務の実務経験が必要となり、1級の受験条件となっています。

それでは、警備員として必要性が高い【警備業務検定】について、警備会社に入社した場合で考えてみますと、その警備会社の業態にも寄りますが、まず実務経験を踏まえて【施設警備業務2級】【雑踏警備業務2級】【交通誘導警備業務2級】の取得を目指すことになると思います。

なぜこの3業務の2級を目指すことになる理由として、比較的この3業務に関しましては、どの警備会社も警備員に資格取得を推奨していると思います。なぜなら、令和4年における警備業の概況では、警備業者の総数(1万524業者)に対して施設は6,860業者数・雑踏は4,395業者数・交通誘導は7,922業者数と多くの警備会社が事業行っているからです。また、業務内容によって【貴重品運搬警備業務】も取得を目指してもらう警備会社もあります。

その他(それ以外)の業務種別は特殊になりますので限られた警備会社しか事業展開をしていません。令和4年における警備業の概況では、空港保安は82業者数・核燃料物質等運搬は36業者数のみとなっています。

この状況からしても警備員がまず資格取得を目指すのは【施設警備業務2級】【雑踏警備業務2級】【交通誘導警備業務2級】の3つになることが分かるでしょう。また、警備業法では、有資格者配置義務が定められており、次にこの3つの警備業務で定められている警備業務検定有資格者配置基準を1つずつお伝えしていきたいと思います。

参考資料:警視庁【令和4年における警備業の概況】
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r4keibigyougaikyou.pdf

 

警備業務検定有資格者配置基準

施設警備業務

防護対象特定核燃料物質を取り扱う施設で施設警備業務を行う場合には、施設ごとに施設警備業務検定の1級又は2級の検定合格警備員を1人以上配置する。また、空港に係る施設で施設警備業務を行う場合には、当該施設警備業務を行う空港ごとに施設警備業務に係る1級の検定合格警備員を1人配置し、当該空港の敷地内の旅客ターミナル施設や当該施設以外の空港の部分ごとに施設警備業務に係る1級もしくは2級の検定合格警備員を1人以上配置することが定められています。

ただし、施設警備に関しましては法令上の配置が求められる施設の数は少ないです。工場や大型施設、商業施設などは基本的に有資格者(検定合格警備員)の配置は不要ですが、契約の際に仕様や条件として有資格者(検定合格警備員)の配置を契約先の企業様や官公庁の要望として有資格者(検定合格警備員)の配置が求められるケースは少なくないと思います。

 

雑踏警備業務

雑踏警備業務を行う場所または各区域の区域内ごとに警備員を指導する者として2級(または1級)雑踏警備業務検定合格警備員を1人以上配置しなければなりません。
また、雑踏警備業務を行う場所または区域を1つの警備会社が複数担当する場合には複数の区域全体を統括管理する者として、雑踏警備業務検定1級合格警備員を1人配置することが定められています。

 

交通誘導警備業務

どの警備会社でも、警備員にこの資格に関しては2級取得してほしい資格だと思います。
なぜなら、交通誘導警備業務(2級、1級)の資格は、国家公安委員会及び各都道府県公安委員会により『資格者配置路線』が定められているからです。資格者配置路線(高速自動車国道、自動車専用道路)において交通誘導警備業務を行う場合には場所ごとに交通誘導警備業務検定1級もしくは2級の合格警備員(有資格者)を1人以上配置することが法で定められています。その為に警備員として交通誘導を行うにあたり、交通誘導警備業務検定の取得が必須に近い状況にあります。

警備業務検定有資格者基準の配置義務は法令において定められており、警備員と資格は切っても切れない関係にあります。また、1級は当該警備現場における統括管理者としての知識及び能力を有していること、2級については警備現場のリーダーとして、自らの判断で適正な警備業務を実施することが求められています。

引用:資料【ウィキペディア(Wikipedia)より「資格者配置路線」】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%87%E6%A0%BC%E8%80%85%E9%85%8D%E7%BD%AE%E8%B7%AF%E7%B7%9A

 

次に、警備業の代表的な資格である、もう一つの国家資格「警備員指導教育責任者」について解説していきたいと思います。

「警備員指導教育責任者」とは


昭和57年の警備業法の改正に伴って導入され制度化された国家資格の1つになります。
この資格では、警備業務の種別の実態を踏まえた指導、教育を行うことができるよう警備業務の区別ごとの選任となり、より専門的かつ実践的な指導及び教育が行われる制度の資格となっております。

事業を行うためには原則各営業所(支店)や警備業務区分ごとに、都道府県公安委員会に「警備員指導教育責任者」を最低でも1人選任して届け出をしなくてはなりません。

そんな指導教育責任者の資格は、4つの区分に分かれています。

  • 1号警備業務(施設警備・空港保安警備)の警備員指導教育責任者
  • 2号警備業務(交通誘導警備・雑踏警備)の警備員指導教育責任者
  • 3号警備業務(貴重品運搬警備・核燃料物質等危険物運搬警備)の警備員指導教育責任者
  • 4号警備業務(身辺警備)の警備員指導教育責任者

資格と役割では、警備業務の専門知識を有し、警備業務を適正に行う為に指導・教育及び警備現場の管理監督を行う役割を担っており、警備業法において警備業務の区分(1号警備、2号警備、3号警備、4号警備)ごと、また事業所ごとに警備員指導教育責任者の選任が法令により定められています。

この資格は警備業界では「指教責(しきょうせき)」や「指導責(しどうきょう)」と呼ばれており、資格を取得すると警備業者として起業することも可能な資格と役割になる非常に重要な国家資格になります。

※補足として
機械警備業務は、1号警備に該当しますが、機械警備業務は警備対象施設から離れた場所や位置から機器を用いて業務に当たるため、現場におけるマンパワーによる警備とした業務とは違い、警備員指導教育責任者(1号警備業務)では担当することができません。正しくは、「機械警備業務管理者」の資格が必要になります。

主な業務内容

研修・導入・教育の指導者であり、具体的には、指導の企画書作成、それに基づいた指導内容の記録、研修の実施管理、研修内容の記録など行う人を指します。その指導者も資格を有している人以外では行えないと警備業法で定められています。
また所属する警備員に対する指導、教育、現場管理、管制業務なども行います。
それ以外では、法定研修の実施や各種帳票の作成、書類の整備などが挙げられるでしょう。警備に関する専門性の高い知識と技能を生かせる警備員指導教育責任者は、警備会社で中枢的な役割を担うため、責任が求められる仕事になります。

資格取得するための条件

この資格を取得するには、まず条件をクリアすることが必要になります。

※最近5年間に当該警備業務の区分に係る警備業務に従事した期間が通算して3年以上の者
※受講する区分の警備業務検定1級合格証明書の交付を受けている者
※受講する区分の警備業務検定2級合格証明書の交付を受けている警備員で合格証明書の交付を受けた後、継続して1年以上、当該警備業務の区分の警備業務に従事している者
※都道府県公安委員会が上記の者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者
※旧警備業務検定1級(当該業務区分に限る)の合格者
※旧警備業務検定2級(当該業務区分に限る)合格後、継続して1年以上、当該警備業務に従事している警備員の者

ここで記載した条件を1つでもクリアすることで初めて【警備員指導教育責任者】の資格を受講する権利が与えられ、警察官経験者以外の人が取得する場合は、都道府県公安委員会が実施する警備員指導教育責任者講習を受けて合格すると資格が取得できます。

【警備員指導教育責任者】は、営業所や警備業務区分ごとに、必ず配置する必要があるため、警備業界において重要なポジションとも言えます。

参考資料:警視庁【警備員に対する教育ができる者】
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/keibi/k_keibi/education.html

引用:資料【ウィキペディアより「警備員指導教育責任者」】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%A6%E5%82%99%E5%93%A1%E6%8C%87%E5%B0%8E%E6%95%99%E8%82%B2%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%80%85

 

まとめ


今回は【警備業界の資格と役割について】解説してきました。

警備業界における資格と役割は重要で、主に「警備業務検定」と「警備員指導教育責任者」の2つが代表的です。

警備業務検定は、警備業法に基づいて設けられた国家資格で、警備業務における知識と技能を認定します。警備業務検定には6種類の業務種別があり、特に施設警備業務・雑踏警備業務・交通誘導警備業務の2級取得が警備員にとって重要で、業界全体でも需要が高いです。これらの検定には法令上の配置が求められる場合もあります。

警備員指導教育責任者は、警備業法改正によって導入された国家資格で、業務種別によって4種類に分かれます。指導教育責任者は、警備業務の専門知識を有し、指導・教育・管理監督を行う役割を果たします。警備員指導教育責任者の資格取得には、条件を満たす必要があります。

これらの資格は警備業界で重要であり、警備員としてのスキルアップや適正な業務遂行に不可欠です。警備会社や警備員個人にとって、これらの資格取得は業務の信頼性や安全性の向上に貢献します。

企業担当者の方は、有資格者や指導教育責任者が多い警備会社は、警備員に対する投資や研修に力を入れている可能性が高いと思います。そういった警備会社は信用や信頼できる警備会社なのではないでしょうか。
以前からもお伝えしていますが、警備会社選びのポイントになりますので、企業担当者の方は有資格者数にも注目して警備会社の選定を行ってみてください。

 

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