皆さん、こんにちは。

前回「警備業の労災について状況と対策」を、お伝えしてきましたが、今回は労災をより未然に防ぐために企業と個々人の危険意識改革の一環として「ハインリッヒの法則」を活かし、警備業務の危険に対し、対策として活用していってほしいと思います。

まず「ハインリッヒの法則」はご存知でしょうか?
もしかしたら「ヒヤリハット」という言葉であれば聞いたことがある方々は多いのではないでしょうか。なぜなら「ハインリッヒの法則」と「ヒヤリハット」は密接な関係にあるからです。
では、「ハインリッヒの法則」とは、アメリカのハーバート・ウィリアム・ハインリッヒという人物が大事故は突然、何の前触れもなく起こるのではなく、そこに至るまでには、何らかの因果関係があると分析しました。労働災害事故を分析したハインリッヒが結論付けた、その法則の内訳は「1件の重大な事故・災害の裏または背景には、29件の軽微な事故・災害があり、300件もの事故・災害に至らなかったもののヒヤリとした・ハッとした事例(ヒヤリハット)」が存在するとしました。
これが「1:29:300」の法則です。この法則を元に警備業務で起こりえる事故を整理していきますと、「1件の重大な事故・労災(死亡・重症)が発生する背景には、29件の軽微な事故・労災が発生し、300件もの事故・労災には至らなかったもののヒヤリハット」があるという下記のようなピラミッド構造になります。

「ハインリッヒの法則図」


引用:資料【ウィキペディアより「ハインリッヒの法則」とは】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%92%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87
つまり「ハインリッヒの法則」は、細かい事故や未遂の積み重ねが大事故につながるということを法則化したものです。この法則は、さまざまな労働現場で事故・労災の注意喚起に活用されており、世界中で最も事故・労災防止を掲げる際に重要な指針となっています。

「ハインリッヒの法則」を活用して警備会社でも行える事故・労災防止策とは?
まず、そのためには、ヒヤリハットを理解していくことが大切です。冒頭でもお伝えしましたが、ヒヤリハットとハインリッヒの法則は密接に関係していることを理解すると、日々の業務の中でヒヤリハットを意識することの重要性が理解できるようになります。
「ヒヤリハット」とは、改めて、「一歩間違えば事故になるような危険なことは起きたが、幸い怪我人も出ず大事にはならなかった」というものです。ハインリッヒの法則での300に当たるところです。簡単に言えば、事故・労災にはならなかったが、事故になりうる可能性があったことは警備業でも多くの場面であると思います。また、そこには前兆がみられます。事故・労災予防のために、これから挙げていくことが重要になってきます。警備会社で、できること、個人で、できる事故・労災防止策をご紹介していき、警備業で起こりえる事故・労災にならないようにするには、企業・個々人それぞれ対策が必要です。では実際、どのような策を施せば、事故や労災を未然に防ぐことができるのかを考えていきます。

未然に防ぐための対策が重要

危険予知活動(KYK)の重要性
危険予知活動(以下、KY活動)とは「危険予知」をするという意味の活動です。
まだKY活動を行っていなければ是非、取り入れてもらいたいと思います。
労災の一番の原因はヒューマンエラーと言われているため、不安全行動から起こるヒューマンエラーをなくすことが重要で不可欠になります。そのためにもKY活動を行うべきです。活動を通して人間である以上、誰でも起こりえる可能性があることを理解して、事故・労災を防止するために、警備員1人ひとりが危険に対する意識を高くもって常に危険が潜んでいる業務に当たっているという認識を持つことが重要です。そこでKY活動に期待されることは、ヒヤリハット事例の共有化です。
いついかなる時も様々な状況、行動行為の背景には危険は潜んでいますし、事故・労災には至らなかったが危険性はあったことを企業全体で把握することや警備員同士で話し合って情報を共有することです。いつヒヤリハットを飛び越えて1件の重大な事故・労災になるとも限りません。ヒヤリハット事例の共有化の重要性とKY活動を行ったものを資料として作成し、また共有することによって、ヒヤリハットの段階や未然に防止するための活動となり、実践や見直し等のサイクルを作り対策を行っていくことがとても大切だと思います。
もし、貴社でKY活動を導入するとした際に重要なのは、一度導入したからといって終わりではなく、何度も実証と検証をして改良を繰り返し行いながら、貴社に最も適した独自のKY活動を作り出すことが重要です。

KY活動以外の重要性
KY活動以外にも重要性があります。まずは教育体制です。教育や指導等の不足により個々人の安全に対する知識や経験がないことによって起こる判断ミスです。これは特に新人や未経験者に多い傾向にあります。そのためにも警備業では、警備員として働く前に基礎的な知識を学ぶため「基本的教育」と「業務別教育」の新任教育があります。ここでどれだけ教育や指導等を学ばせ知識を伝えられるかによって、今後の新人・未経験警備員が業務についた際、判断を誤る可能性は下げられると思います。まずは判断ミスをどれだけ抑えられるか。そもそも正しい判断が分かっていないから起こるのであって「なぜミスが起きたのか」以前の問題になります。新任教育以外にも現場でのフォローや技術向上の教育を施し、警備員1人ひとりに繰り返し行っていくことで、個々人にあらゆる状況判断能力を身に着けさせていくことが重要です。

次に、慣れや慢心的な考えを取らせない対策です。
人は慣れなどからくる過信から正しい行動・行為を自分勝手に判断して間違った省略行為などをすることによって引き起こす事故・労災は必然的に可能性が上がります。慣れや慢心的な考えなどからくる行動・行為を行わせないためにも企業と個々人の意識改革を行い双方が危険に対して理解することが重要になります。

最後に、企業は日々、「安心安全対策」・「危険予知意識対策」・「熱中症対策」・「警備員の体調管理」・「情報共有」などは万全に行っているかを、すぐ判断、管理しやすいように体制を構築することが重要です。
また日々貴社独自に誰もが「情報発信」できるようにすることも必要です。日常的に呼びかけや共有することで普段から危険・対策への意識づけができるようになり、個々人の注意力が向上され、それぞれが危険への意識を高めることができるためです。共有する場があることで、1人ひとりの危機意識の向上また不安全行動排除させるきっかけになると思います。

まとめ
今回挙げたことは、ほんの一例に過ぎません。
また対策や施策は警備会社によって様々違いがあると思います。ですが、どれだけ対策を考えても、事故・労災が起きてしまうこともあると思います。また警備業の事故・労災は年々増えてきているのも現状です。しかし、いつやってくるかわからない事故・労災を未然に防ぐには、毎日のささいな取り組みが不可欠で、不安全な状態や行為を再認識し、慎重に業務に当たれば防げることもあると思います。警備業務上の危険に企業・個々人がしっかりと向き合い、1人ひとりが考えて注意点を共有することが、「1件の重大事故」を防ぐきっかけとなるのではないでしょうか。
警備の仕事には常に危険が潜んでいるため「ハインリッヒの法則」を意識して業務に当たる際は注意して行って頂き、少しでも事故・労災がなくなっていくことを願っています。

以上「ハインリッヒの法則で危険を未然に防ぐ方法」になります。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。